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仙台フィルハーモニー管弦楽団 ニューイヤーコンサート2005

   2005.1.6 電力ホール・仙台市)

 

2005年の新年そうそう面白いコンサートに遭遇しました。

 

【プログラム】

ロッシーニ 歌劇「ランスへの旅」序曲

ポンキエルリ 歌劇「ジョコンダ」より “時の踊り”

ブラームス ハンガリー舞曲第一番

グレグソン チューバ協奏曲より チューバ:大塚哲也

ピアソラ  忘却 オーボエ:鈴木 繁

ハチャトウーリアン 組曲「仮面舞踏会」より

その他 

 

 

ニューイヤーコンサートならではの楽しい曲が盛りだくさんで、そのうちの一曲でチューバ協奏曲という珍しい曲をやりました。指揮者:外山雄三氏と主席チューバ独奏者:大塚哲也氏(注1)の会話が微妙な掛け合い漫才になり、場内は爆笑の渦でした。以下はそのときのやりとりです。

外山:金管楽器の最低音の「チューバ協奏曲」という珍しいものを聴いていただきます。

オーケストラの中でチューバは大活躍をしていますが、意外に新しい楽器です。交響曲でチューバを最初に使った作曲家はベルリオーズで、皆さんよくご存知の幻想交響曲にチューバが使われております。これは最初はチューバの前身でありますオフィクレイドという楽器の為に書かれたのを、新しいもの好きのベルリオーズがそのオフィクレイドに書いた楽譜の段にチューバという名前だけ入れた、という説があります。しかしこれはあまり確かではありません。で、チューバを大活躍させたのはワーグナーです。リヒヤルトワーグナーが自分のオペラ・楽劇にチューバを沢山活用しました。ですからチューバという楽器は私たちがオーケストラで使っているいろいろな楽器の中で意外に歴史が浅いものです。

(ここで舞台の袖のほうに向かって)

もう途中でもいいから独奏者でてきてくれないかな。独奏者どこにいるの。

オーイ!(と独奏者を呼ぶ)

 

独奏者:大塚哲也氏が舞台のかみてよりノッシと登場すると場内拍手)

 

(大きな楽器のチューバを抱きかかえた大塚哲也氏を見ながら)

外山:世界中でチューバの人はやはり体の大きい人が多いの?

大塚:そうです。

 

外山:あなたは中くらいですか。

 

大塚:中の上くらいです。

(場内爆笑)

外山:先ほど申し上げましたようにチューバのコンチェルトというのはそんなに数は多くありません。私たちが一番よく知っているのはイギリスの近代の作曲家ヴォーン・ウイリアムズのチューバコンチェルトですが、これから演奏するのはエドワード・グレグソン、これはどこの人だっけ?

 

大塚:これもやはりイギリスの方です。

 

外山:それにしては恥ずかしげも無くヴォーン・ウイリアムズのかけらがでてきますね。

これは効果としてしょうがないのかな。

 

大塚:これはかなりパロディーとか皮肉もはいっていると思うんですがね。

 

外山:もともとは管楽器だけのパートで書かれていて、オーケストラで演奏するのは今回初めてですか?

 

大塚:そうです。今回初めてです。おそらく日本でも最初になるのでは。

 

外山:世界では最初じゃない?

 

大塚:それはないです。

 

外山:もうひとつだけ別のことをききますが、世界の音楽家の中でチューバの名人はみんな北のヨーロッパ、北欧の寒いところに名人が沢山いるという風に言われているのですが、そんなことありませんか?

 

大塚:えー、そうでもないとおもいます。

 

外山:わかりました。で、この方の目指している方向が私にはわかりました。ほとんどアメリカの名人を目指しているな。

 

大塚:はい

 

外山:というようなことで、このグレグソンという作曲家の名前はご記憶なさる必要はありません。多分この曲しかわれわれは永久に聞かないでしょう。

これから聞いていただく協奏曲は3つの楽章からできておりますが今日は第一楽章を聴いていただきます。

 

(ここでチューバ協奏曲の第一楽章の演奏)

(チューバ協奏曲が終了して、大塚氏は汗びっしょり、指揮者は観客のほうをむいて)

 

外山:えー、こんな大きな楽器を聴くチャンスはあまりありませんので、もう一曲皆さんに聞いていただきます。

(拍手)

外山:ジョン・ウイリアムズといえばスターウオーズですが、そのスターウオーズからジャバザハットを演奏します。もうピンときていらっしゃる方が沢山いらっしゃると思いますが、この楽譜のあたまにテンポはジャバのテンポでと書いてある。ジャバってなんだかわからないのでこの大きなお兄さんに聞いたテンポでやりますが、ジャバってなに?踊り?

(と大塚氏に聞く)

(大塚氏首を傾げて、知らない風をしている)

 

外山:え、なに、しらない? シャレ?

 

大塚:あのー、ジャバザハットという曲ですが、ジャバのテンポでと書いてあるだけなんです。

 

外山:要するにあなたのテンポか?

 

大塚:ハイ、作曲家がそう書いてます。

(場内爆笑)

 

外山:ということで聴いていただきます。

(ここでジャバザハットの演奏)

ジャバに体形が似ている(失礼)大塚哲也氏がジャバザハットを演奏するという粋な組み合わせを実現させた指揮者のサービスはニューイヤーコンサートならではでしょうか。トボケテいた大塚哲也氏も愉快でした。

(注1) 昨年の興行成績で空前のトップを獲得した宮崎監督の「ハウルの動く城」映画のサウンドトラックを吹いているのはこの人らしいよ。

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